話し言葉や周囲の音が聞こえない、または聞きづらくなる状態である聴覚障がい。今回お話を伺った林さんは先天性重度難聴で、補聴器をつけないとほとんど周囲の音が拾えない状態です。「障がいは個性だと捉えている」と語る林さん。なぜそのような考えに至ったのか、バリュエンスで働いていてどのようなことを感じているのか、詳しく伺いました。

林 吾祁佳 (はやし あきよし)
先天性重度難聴。2021年5月にバリュエンスに入社。人事部にて、障がい者採用や中途採用のサポート、入社案内対応などに携わっている。

仕事をポジティブに捉えてほしい。障がい者に対する思いから人事の道へ

――本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。お話をさせていただく前に、お伝えしておきたいことがあります。私は、生まれつき耳が聞こえなくて。補聴器をつけていれば、なんとか周りの音は拾えますが、相手の話し声はほぼ聞き取れません。

発音が少しおかしいところもあると思います。もしわからなければ、遠慮なく「ここがわかりません」「ここはもう一度言ってください」と指摘してください。

――ありがとうございます。こちらの質問も聞き取りづらいようであれば、遠慮なくおっしゃってください。ではまず、これまでのキャリアについて伺えたらと思います。

バリュエンスは3社目になります。新卒でトラックの製造を行う会社へ入社し、エンジン組立ラインや設計、新人教育に携わっていました。3年ほど働いた後、2社目は駐車場を管理する会社に転職し、人事としてのキャリアをスタートしました。

主に採用に関する業務に携わらせていただき、最終的には障がい者採用の部分も任せていただけて。ただ8年ほど働いたときに、他部署へ異動になりました。その際、人事として働きたいという思いが強く、再び転職を考え、バリュエンスに入社したといった流れです。

――人事にこだわりがあったと。

1社目で働いているときに、私と同じ聴覚障がいを持っている同僚がいて、仕事に関する悩み・相談をよく受けていたんです。またその方以外でも、私を含めて障がい者は仕事に対する悩みが多くて。私がこれまで会ってきた障がい者はほとんど、仕事をネガティブに捉えているようにも感じたんですね。

だから障がい者が働きやすかったり、活躍できたりするような環境づくりに携わり、少しでも仕事に対してポジティブな考えを持てる方が増えたらいいなと思って、人事という仕事を選んでいます。

障がい者採用に関わるようになって、「林さんの話を聞いて、勇気をもらえました」と言ってくださる方もいます。それがとてもやりがいになっていますね。

障がいを言い訳にしない。お互いに助け合えるように能動的な行動を。

――人事として働ける職場は他にもあると思うのですが、バリュエンスを選ばれた決め手は?

転職エージェントを利用して、色々な会社を見て選考を受けていたのですが、その中でもバリュエンスは面接の雰囲気がフランクで、働きやすいのではないかなと思いました。また人事で障がい者採用に携わらせてもらえること、これまで大手企業で働いてきたのでベンチャー企業で挑戦したかったこと、リユース事業で環境問題にも寄与できることなどに惹かれて入社を決めました。

 ――実際入社をされてみて、どのように感じていらっしゃいますか?

 障がい者採用担当ではありますが、それだけを行っているわけではありません。中途採用のサポート、入社案内対応などにも関わっています。そのように障がい者採用担当という役割に固執せず、さまざまな業務にチャレンジできるところがバリュエンスの良さだと思っています。

――林さん以外にも、バリュエンスには障がい者の方が何人か在籍されているんですよね。

現在は約20名の方がバリュエンスに在籍しています。人それぞれで持っている障がいは異なるので、その特性に合わせて人員配置、フォロー面談などを行っています。

例えば身体障がい者の方であれば、 障がいの特性にもよりますが、力仕事のような体力的に負荷のかかる仕事はなるべく避けるようにしていたり、精神障がい者の方であればルーティンワークを担当してもらったり。

また、私のような聴覚障がい者の方に対して他の社員には「電話対応は代わりにする」「コミュニケーションをとるときはマスクを外す」「チャット・筆談を使って連絡を取り合う」といった配慮をしてもらっています。

 あと農園で働いている障がい者スタッフもいますね。

――農園?

バリュエンスが契約している農園が神奈川県愛甲郡にあります。そこで障がい者スタッフがベビーリーフを栽培しているんです。収穫したベビーリーフは各オフィスに届いて、社員が自由に持ち帰れます。毎回在庫切れになるほど好評です。

――障がい者でも働きやすい環境だと。

バリュエンスで働くメンバーは、障がい者に対する配慮が必要なときには、嫌な顔を全くせず積極的に動いてくれます。とても助かっていますし、ありがたいです。

私としては、そういったフォローをしてもらって当たり前という感覚は一切ありません。だからフォローをしてもらう分、チームにどうすれば貢献できるかを考えるようにしています。

例えばある作業に取り組むときに時間を計って、どうすればより短い時間で効率的に業務を終えられるのかを考え提案したこともあります。

障がいを言い訳にしないで、自分が活躍できることを模索してそれを行動に移すような、能動的な行動をどんどんするように意識していますね。お互いにWin-Winになるように働いている感じです。

障がいも自分らしさ。その特性や強みを活かせる環境づくりを行っていきたい。

――林さんのお話を伺っていると、障がいを前向きに捉えられているのかなと感じます。

前向きというよりも、ひとつの個性として捉えている感じです。私は生まれつき耳が聞こえないので、それが当たり前だと思っています。顔が違うとか、性格が違うとか、障がいもそういう違いの一部なんですよね。

聴覚障がい者は、耳が聞こえない分、主に目で情報を収集しています。だから、他の人が気づきにくい小さなミスにも目視で気づきやすいという特性があります。

他の障がい者にもそれぞれならではの特性や強みがあって。その特性や強みを上手く活かせれば、健常者と同じぐらい、もしくはそれ以上に力を発揮できることもあるんです。

――なるほど。林さんは自分の特性、個性を活かして、バリュエンスで働けているわけですね。

そうですね。とはいえ、まだ改善できる部分もたくさんあると思っています。

一例ですが、障がい者が働けるポジションはまだ増やせると感じているので、増やしていけるように注力しているところです。ただ障がい者数だけを増やせばいいわけではありません。採用した後に定着、活躍できる環境が必要です。

障がい者と言っても、人それぞれ特性、個性は違います。それを十分に発揮できる環境をより整えていきたいですね。そのために、障がい者理解をより促進していくことも併せて行っていきたいと考えています。

――障がい者に対する理解がまだまだ足りていないと。

これまで生きてきた中で、障がい者と健常者の間には高い壁のようなものがある気がしていて。お互いに気を遣いすぎているかなと。遠慮し合っている。

健常者の方には障がいに対する理解を深めていただき、気を遣いすぎないようにしてもらえたらいいなと思いますし、障がい者の方には遠慮しすぎず、自信をもっと持ってほしいなと思います。「ひとつの個性、特性だから」とお互いが理解し合えば、もっといい関係性を築けるはずです。 障がい者と健常者の架け橋のような存在に、私がなれたらいいですね。