今回お話を伺ったのは、人事部人材開発課カテゴリースペシャリストの小田桐賢太さん。30代の半ばで「キャリア迷子」のような状態に陥ってしまいますが、そこで自分の人生の指針のようなものに気づけたのだそう。

その経験を活かし、現在は新卒採用に携わり、学生が自分の生き方を見つけられるような選考を行っています。小田桐さんのキャリアを伺いつつ、バリュエンスの新卒採用文化や重要視している点に迫ります。

小田桐 賢太
2016年にバリュエンスへ入社。人事部人材開発課カテゴリースペシャリストとして新卒採用のサポート、社内研修制度の開発などを担当している。

「仕事ってそもそも何のためにやるんだろう」30代半ばでキャリア迷子に

――本日はよろしくお願いします。小田桐さんはこれまでにさまざまなご職業を経験されてきてらっしゃいますよね。

そうですね。劇団員、ホスト、ラグジュアリーブランドシューズの販売員、ウエディングプランナー、キャリアアドバイザー、セミナー講師などを経験し、バリュエンスに入社しました。現在は人事部で、新卒採用のサポート、社内研修の開発、研修の講師、コーポレートブランディングなどを行っています。

――とても面白い経歴ですね。人材領域に関わることになった経緯を伺ってもいいでしょうか?

ウエディングプランナーを辞めて、次のキャリアを考えているときに、自分自身がなんで生きているのかわからなくなってしまったんです。それまでは人からの紹介で職に就いてきたので、30代半ばで初めて就活をしたんですよね。

「仕事ってそもそも何のためにやるんだろう」「次はどんな仕事をしたいんだろう」と考えても答えが出ずに、悶々としていました。

――いわゆる「キャリア迷子」のような状態に。

そうです。それで今までのキャリアを振り返ってみたんですよ。劇団では誰かに何かを伝えていたり、ホストでは誰かの時間に濃密に関わっていたり。販売員のときは商品よりも自分を売るようなスタイルで接客をしていて3年連続世界1位の売り上げを作りました。それにウエディングプランナーは、誰かの幸せを作るような仕事だった。

そのような過去のキャリアから、自分は何か目的があって人に関わり続けているんだなと。その目的は何なのか、何が成し遂げられた時に1番嬉しいのかと考えた結果、「誰かの人生に名前を残していくことだ」とピンときたんです。

「誰かの人生に名前を残す」ために、未経験で人材領域へ

――「小田桐賢太」という名前を誰かの人生に残す。

人から名指しで何かをお願いされるとか、人から小田桐だからこそできるだろうと思われているとか、とにかく小田桐賢太という人間を認めてもらえることがしたかった。それは承認欲求ではなく、エネルギーの源泉のようなものです。

それに「小田桐賢太」という名前が昔から好きで。さまざまな人と上手に関わる賢さと、縁を太くつなぐこと、そうすれば人生は豊かになっていくという願いが「賢太」という名前に込められています。この名前を誰かの人生に残せたら、それこそ人生は豊かになっていくんじゃないかなと。

――ということは、自分の名を人の人生に残せそうな仕事が人材領域だと思われた?

そうですね。自分がキャリア迷子のような状態になっていたので、同じように悩む人はたくさんいるはずだと思ったんですよ。それに自分は就活を通じて、生き方の指針のようなものが決まって、働くことをポジティブに捉えられるようになりました。仕事は自分の人生を豊かにしてくれるものだって。

だから「働くことが苦痛である」とか、「仕事を嫌で辞めてしまう」とか、そのような人を変えることができたらなと思ったんです。一緒に悩んで、人生の指針のようなものを見つけられたら、それこそ「誰かの人生に名前を残すこと」ができるじゃないですか。

――確かに。とはいえ、未経験で人材領域に転職されたわけですよね。転職活動は大変ではありませんでしたか?

難しかったです。それこそ自分の持っているカードが弱すぎて唖然としました。人材領域の募集には「大学卒業」「人事経験1年以上」「キャリア関係の資格保有者」など、さまざまな条件が定められていて、どれもクリアできなかったんです。世の中は人ではなく、人が持っているものを見るんだなと気づかされましたね。

ただ諦められなかったので、人材領域で募集を出している企業に直接電話をかけて、営業しました。とにかくやりたいという思いをぶつけたんです。そうしたら1社だけ、小田桐賢太の人柄を面白いと感じてくれる企業があって。それでその企業で働けることになったんです。

バリュエンスへ入社を決めたのは、「夢のような店舗」に惹かれたから

――人柄や熱意を見てくれて、転職をすることができたんですね。その企業を退職した後、バリュエンスに入社されたと思います。入社することになったきっかけを教えてください。

前職の会社でキャリアアドバイザーをしていたときに、いろいろな会社に自分のレジュメを送っていて。それをたまたま見たエージェントがバリュエンスの人事部長に声をかけてくれました。当時バリュエンスはALLUという新しい店舗を立ち上げるタイミングで、販売員経験のある人材を求めていたんです。

――それで入社を?

いや、一度はエージェント側へお断りをいれているんですよ。なぜかというと、一時流通の経験が長かったことから2次流通の業界に対してあまりいいイメージがなかったからです。高いものを安く売っていたり、接客が胡散臭いイメージがあったり、とにかく今考えてみても間違った認識しかしていなくて、そんな業界には、絶対に行きたくないと思っていました。ただ新店舗の構想を聞いてみたら、ものすごく興味が湧いて。

販売員もお客様も、商品のことが本当に好きな人だけが集まって、好きなだけ語り合えるようなお店。「これが実現できたら夢のようだな」と思ったんですよね。それに販売員を行っていたときに「こういうお店があったらいいのにな」と自分で考えていたものと、すごくリンクしたんです。

まさにリユース業界のイメージが覆されたんですよね。

「小田桐さんの経験をお店に全部詰め込んじゃってください」と当時社長はじめ採用にかかわってくださった皆さんから言われたことが決め手で、入社を決めました。一度は自分のお店を持ちたいと思っていたので、それがすごく響いたんです。

――入社されてすぐに採用や社内研修の領域に携わったんですか?

そうですね、バリュエンスに入社してしばらくは、ALLUの立ち上げを行っていました。スタッフの採用や教育、店舗のブランディングを主に担当していましたね。その後は中途採用や研修をメインに担当していましたが、最近は新卒文化醸成に向けた採用や研修がメインミッションです。また社内研修だけではなく、他社と合同で管理職向けの研修開発も担当させてもらっています。

自分が共感できる、自分に共感してくれる人ならバリュエンスにマッチする

――新卒採用において重視している点はどのようなものでしょう?

「小田桐賢太」という人間でいることですかね。バリュエンスの人事部の小田桐ではなく、「小田桐賢太」という個人としていること。それは人を採用する上で、バイアスをなるべくかけたくないからです。自分自身でちゃんと学生のことを見たい。個人対個人で向き合い、学生がどのように生きようと思っているのかをしっかり知りたいなと。

その生き方が一緒に実現していけそうなのであれば、小田桐は猛プッシュします。自分が共感できる、自分に共感してくれる方は、会社にもマッチすると思っているので。

新卒採用コンビ

――それはなぜでしょうか?

自分もバリュエンスのことが好きですし、理念にものすごく共感しているからです。自分が共感できる、その自分に共感してくれるということは、会社にも自ずとマッチするはずだと。採用を何年も続けてきた中で出た、今のところの結論ですね。実際、「小田桐と一緒に働きたい」と言って入社してくる新卒のメンバーがたくさんいますし、今も活躍しています。

――それは人事部で共通の認識なんですか?

そうだと思います。人事部で働く人たちはみんな、価値観や考え方が社長とある程度同じというか、重なる部分がどこかに必ずあって。人事が社長の考えていることを代りに発信しているような感じなんですよね。だから自分が共感できる人、自分に共感してくれる人なら、会社にもマッチするという考え方は理解してもらえるんじゃないかなと。

就活は「仕事」だけではなく、「生き方」を決める時間

――選考フローを教えてください。

2022年から始まったんですが、MSP(マイサステナブルポリシー)というものを使って選考を行っています。MSPとは「持続可能な生き方をどのようにすればできるのか」を決めるものです。自分のミッション、ビジョン、スピリットを決めてもらったり、SYOUGsといってSDGsのように17個の目標を自分の目標に変えて考えてもらったりしています。

選考は1dayインターン、MSP作成塾、MSP提出面談、最終選考といった流れで進みます。1dayインターンで、MSPとはどのようなものなのか理解を深めてもらい、MSP作成塾で自分のMSPやSYOUGsを作ってもらう。それを自分でもブラッシュアップしてもらった上で、1to1のMSP提出面談を行い、最終選考ではMSPを元に3分間のプレゼンをしてもらいます。

――すべての選考でMSPが使われるんですね。

そうですね。候補者の方によく伝えているのは、「就活は生き方を決める時間だよ」ということ。多くの就活生は生き方がわからないから業界や待遇、自分に向いていることなどで仕事を選んでしまいます。でも生き方さえ決まってしまえば、仕事の軸も自ずと決まり、楽しく働けると思うんですね。

バリュエンスの選考だけで使えるものではなくて、どんな企業の選考でも使えるようなMSPシートを学生さんに作ってもらう。そのために、このような選考を行っています。

――就活は生き方を決める時間。そんな風に考えたことはありませんでした。

自分らしく生きてほしいですし、本当にいいと思っている、やりたいと思っていることを突き詰めていってほしいんですね。バリュエンスでは、その人がその人らしく、その人として持続して生きていくためにどのようにすればいいかを考える研修をやり続けています。

その結果、自分の生き方と向き合う人は社内に増えたように思います。新卒採用においてもそのような人を増やすことができたらなと考えて、さまざまな施策を行っています。

「何かをやりたい」という思いを大切にしてほしいし、そんな自分を愛してあげてほしい

――優秀な人材を採用しようとするのではなく、自分の生き方と向き合う人を増やすために……。

やりたいことがあるって、すごく前向きなことじゃないですか。「何かをやりたい」と思えた自分のことを愛してあげてほしいんですよね。学歴とか、スキルとかも大事かもしれませんが、それ以上に自分の中からこみ上げてくるような思いを大切にしてもらえたらなと。


その上で、もしバリュエンスと重なる部分がある方はぜひうちに来てください。もしくはやりたいことはわからないけれど、「楽しく働きたい」「かっこいい社会人になりたい」みたいな思いでも結構です。自分の思いを大切にできる人たちと一緒に働けることを楽しみにしています。実際、小田桐が関わって採用したメンバーと今一緒に働いていますから。

――小田桐さんに共感して入社された方と一緒に、新卒採用を担当されている?

そうです。いまコンビみたいな感じで一緒に働いています。このような事例は特段珍しくはないと思いますが、すごい縁だなと思っていて。こういう縁が生まれるのも社会に出ることの楽しみのひとつですよね。

採用という場ではありますけど、バリュエンスに入社するかどうかに関わらず、人と人の縁が生まれる場所なので、そこでの出会いは大切にしたいんですよね。