気候変動はバリュエンスグループの事業活動において、重要な経営課題の一つと認識しています。課題の解決に向けてガバナンス体制を強化するとともに、気候変動リスクの事業への影響分析及び適切な対応への取り組み、成長機会の取り込みを推進し、企業戦略に生かしていきたいと考えます。そこで当社は、金融安定理事会により設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同します。持続可能な社会と環境の実現と、当社グループの持続的な成長に向けて、気候変動への対応及び関連する情報の開示を積極的に行っております。
サステナビリティへの対応は重要な経営課題の一つという認識のもと、関連する重要事項については取締役会で審議、決定しております。社外取締役にサステナビリティに精通した取締役を選任することで、取締役会はサステナビリティの監督に適切な知識・経験・能力を確保した構成になっております。
サステナビリティ全体の業務執行に係る実務については、取締役会の支援機関として設立されたESG推進委員会が担っております。ESG推進委員会は、サステナビリティに関するリスク・機会の抽出、マテリアリティ(重要課題)の特定、課題解決に向けた指標と目標の設定及び進捗管理を行っております。なお、サステナビリティに関する戦略の責任者の明確化及びサステナビリティ経営の更なる社内浸透を目的に、ESG推進委員会の下部組織として重点テーマ毎に分科会を設置し、ESG推進委員を各分科会の責任者として選任しております。
取締役会は、ESG推進委員会及びリスクマネジメント委員会で協議、決議された内容の報告を受け、当該報告内容を踏まえて、当社グループのサステナビリティ課題への対応方針及び実行計画等についての議論、審議を行うとともに、執行の監督を担っております。ESG推進担当取締役はESG推進委員会の委員長を務め、サステナビリティの取組に係る執行責任を負っております。また、代表取締役はリスクマネジメント委員会の委員長を務め、サステナビリティリスクを含むリスクマネジメントに係る執行の最終責任を負っております。
気候変動関連のリスク・機会は、長期にわたり当社グループへ影響を及ぼす可能性があるため、マイルストーンを設定し検討することが必要であると認識しております。そこで、検討期間を「短期」「中期」「長期」の3期に分類し、気候関連のリスク・機会を検討いたしました。 それぞれの期間の定義は次のように定めております。
| 期間 | 定義 | |
|---|---|---|
| 短期 | 2027年8月期まで | 中期経営計画の目標年度までの期間 |
| 中期 | 2030年8月期まで |
SBTにおける短期目標年度及び 当社グループ環境長期目標年度までの期間 |
| 長期 | 2050年8月期まで | SBTネットゼロ目標年度までの期間 |
気候変動が当社グループに与えるリスク・機会及びそのインパクト、戦略のレジリエンスの把握、更なる施策の必要性の検討を目的に、主要事業である「ブランド品、骨董・美術品における買取・販売事業」を対象にシナリオ分析を実施いたしました。シナリオ分析の検討に際しては、以下、1.5℃及び4℃シナリオの2つのシナリオを設定いたしました。
| 設定シナリオ | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ |
|---|---|---|
| 社会像と事業環境への影響 | 世界全体で2050年度までのネットゼロを実現するため、大胆な政策や技術革新が進められる世界。脱炭素社会への移行に伴う社会変化といった、主に移行面でのリスク及び機会が顕在化しやすい。 | 気候変動対策が不十分で現在の排出ペースが継続し、化石燃料依存の経済発展が続く世界。国際協力や政策対応が限定的で、極端な気象現象や災害が多発し、主に物理面でのリスクが顕在化しやすい。 |
| 参照 | 「Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」(IEA) | 「Representative Concentration Pathways(RCP8.5)」(IPCC) |
当社グループは、カーボンニュートラル実現に向け戦略のレジリエンスを継続的に強化していく必要があると認識しております。そのためには、リスクを適切に移転・回避・軽減するとともに、機会に対しては積極的に対応することが重要との考えのもと、具体的な対応を検討いたしました。
特に重要とされた項目については当社グループの戦略に反映し、管理しております。
当社が特定した主なリスク・機会とそれらについての対応、戦略のレジリエンスは以下の表のとおりであります。
| 区分 | 主なリスク・機会 | 発現時期 | 影響度 | 主な対応 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| リスク | 移行リスク | 政策/法規制 |
電力・エネルギーコストの増加 炭素税や排出権取引の導入に伴う電力料金の上昇により、店舗や物流拠点における運営コスト(電力・空調)増加 |
短期~長期 | 中 |
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物流・輸送コスト増加 炭素税導入に伴う燃料課税等により燃料費が上昇し、買取商品の移動や販売に伴う国内及び海外の物流・輸送コストの増加 |
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| 市場 |
原材料コスト上昇 電力価格・燃料価格の上昇による物流・運営コスト増加 |
短期~長期 | 中 |
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| 評判 |
気候変動対応遅れによる評価の低下 リユース事業において、気候変動関連の対応が不十分と認識された場合、投資家・金融機関からの融資条件悪化による資金調達コストの増加、環境意識の高い消費者離れやパートナー企業との提携機会損失による売上高減少 |
短期~長期 | 大 |
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| 物理リスク | 急性 |
自然災害による店舗・物流拠点の停止・損害 台風の大型化や豪雨増加により、店舗や物流拠点が浸水・損壊することで、休業・営業停止に伴う売上機会損失、設備の修繕費や在庫損失が発生 |
短期~中期 | 中 |
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| 慢性 |
気象の極端化による来店客数減少 猛暑や豪雨などの極端気象、又は感染症流行により外出が控えられ、店頭買取の減少及び小売店舗売上高の減少 |
中期~長期 | 中 |
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| 機会 | 資源効率 |
省エネ化・物流効率化による資源効率化 資源効率化による運営コストの削減 |
短期~中期 | 中 |
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| 製品とサービス |
環境配慮意識の高まりによる競争力強化 消費者の環境配慮意識の高まりに伴う循環型消費拡大により、新規顧客開拓、循環型サービス創出、市場シェア拡大 |
短期~中期 | 大 |
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| 製品におけるサービス・市場 |
環境配慮意識の高まりによる循環型消費市場の拡大 環境負荷が低いリユースサービス、リペア事業のニーズの増加 |
短期~中期 | 大 |
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以上のシナリオ分析の結果、当社グループにおいては、気候変動対応が不十分と判断された時の投資家・金融機関からの評価低下による資金調達コストの増加、環境意識の高い消費者離れやパートナー企業との提携機会損失による売上高減少が、重要な移行リスクとして改めて認識されました。
また、物理リスクにおいては、自然災害による店舗や物流拠点への影響が大きなリスクとして認識されました。一方で、消費者の環境配慮意識の高まりに伴うサーキュラーエコノミーの普及により、当社グループの主要事業であるリユースの市場の拡大という機会も再認識されました。このため、認識されたリスクに対応することが事業機会の追求や企業価値向上にも繋がるとの考えのもと、カーボンニュートラルの達成に向け取組を積極的に進めております。
特に、影響度の高いリスクへの対応は喫緊の課題でもあり、各種施策の検討・実施を推進しております。具体的には、各種イニシアチブへの参加・賛同や、気候変動対応に関する開示の拡充、災害に備えた体制強化等を進めてまいります。 GHG 排出量の削減については、Scope1、Scope2の削減はもとより、Scope3においても排出量の多いカテゴリから優先的に対応を検討し、カーボンニュートラルを目指してまいります。
当社グループは、気候変動に関するリスク・機会について主要事業を中心に対象活動を選定し、ESG推進委員会でより詳細に検討を行っております。
ESG推進委員会において議論・検討された内容は取締役会で報告され、特に重要とされたリスク・機会は当社グループの戦略に反映し、ESG推進委員会が中心となって管理を行っております。
また、気候変動リスクの分析結果や取り組みの状況についてはグループ全体のリスク管理を行うリスクマネジメント委員会に共有され、同委員会により気候変動に係るリスクの管理状況がモニタリングされております。ESG推進委員会及びリスクマネジメント委員会が連携しながら、気候変動リスクの管理を行っております。
当社グループは、気候変動への対応を経営上の重要課題と位置づけ、GHG排出量を主要な指標として設定しております。2030年8月期までにScope1,2,3におけるカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げ、科学的根拠に基づいた削減目標であるSBT(Science Based Targets)認定について、2026年8月期中の取得を目指しております。設定した指標及び目標と進捗状況については、以下のとおりであります。
| 指標 | 2024年8月期 実績 |
2025年8月期 実績 |
2027年8月期 目標 |
2030年8月期 目標 |
|---|---|---|---|---|
| 再生可能エネルギー電力比率 | 0% | 2026年1月 開示予定 |
50% | 100% |
|
GHG排出量削減率(Scope1,2) ※2023年8月期実績比 |
5.0%増 | 50% | 90% | |
| GHG排出量(Scope1,2,3) | 83,945 t-CO₂e | - | カーボンニュートラル※ |
※ 削減努力を進めたうえで残存する排出量については、SBTに準拠した方法でオフセットを行う前提としております。
前連結会計年度のScope1、Scope2排出量は2023年8月期実績対比5.0%増となりました。主な要因は、国内外における新規店舗オープン等による事業拡大に加え、当社グループが入居する施設への再生可能エネルギー導入の働きかけや導入準備段階にとどまったことによるものであります。一方、当連結会計年度においては一部店舗において再生可能エネルギーの導入を実施したことから、Scope1、Scope2の削減効果が見込まれております。算定結果については2026年1月に開示予定です。なお、現在のGHG排出量実績については第三者検証を実施しておりませんが、今後はデータの信頼性向上のため導入を検討してまいります。
今後は、GHG排出量の削減に向けた具体的な施策を検討・実行するとともに、情報開示の拡充にも取り組み、ステークホルダーに対する透明性の高い報告に努めてまいります。
過去年度におけるGHG排出量実績は、「ESGデータ」で開示しております。
2025年10月24日更新
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